2022年7月掲載

Special Interview
Audi Japan Sales × 老舗ブランド「山本山」

伝統と革新を続ける老舗経営者から見た
Audi、そして電気自動車とは。

創業330年以上の歴史を持ち、伝統を守りながらも時代に合わせた革新性を持つ老舗ブランド「山本山」。
その経営者でありAudiオーナーでもある山本 嘉一郎氏をこの度、電気自動車 Audi e-tronのアンバサダーとして迎えました。
技術による革新を掲げるAudiブランドへの想い、そして先進技術を結集して誕生したAudi e-tronはその目にどう映るのか
インタビューを通して迫ります。

PROFILE

株式会社 山本山 代表取締役社長
山本 嘉一郎 氏

所有モデル:Audi RS 4 Avant / Audi RS Q8
1959年生まれ。学生時代にお茶の製造工場でアルバイトを経験し、大学卒業と同時に家業へ入る。
2008年に代表取締役社長に就任。休日はゴルフやドライブ、写真撮影などをして過ごす。

ーーいま、世界中の老舗ブランドにとって、ブランドの価値を重んじながら新しい時代に対応していくという意味において「伝統と革新」が大きなテーマになっているように思います。創業1690年の老舗ブランドである山本山(株式会社 山本山)の代表取締役を務める山本嘉一郎さんは、どのような形で「伝統と革新」に取り組んでいますか?

山本 嘉一郎さん (以下:山本)敬称略:ひとつだけご紹介しますと、日本橋二丁目にある私どもの店舗は、2018年のビルの立て直しに合わせてリニューアルいたしました。ただし、私が店舗に初めて入ったのは、オープンの1週間前。もう、私が何か言っても何も変えられないタイミングまで、敢えて足を踏み入れませんでした。

ーーなぜ、そうされたのですか?

山本:新しい店舗は、私の娘を中心とする若い世代にすべてを託しました。裏を返せば、私の感性を新しい店舗に注ぎ込みたくなかった。これが私の考える「仕事を任せる」やり方なんです。

ーー実際に出来上がった店舗をご覧になって、どんな印象を持たれましたか?

山本:もう場所からデザインからひとつひとつのポイントまで、私だったら絶対にしなかっただろうという仕上がりでした(笑)。正直、「これが若い人の感性なのか?」と驚きましたね。ただし、不思議なことに、店舗をご覧になった方々からは「実に山本さんらしいお店ですね」とおっしゃっていただいています。つまり、私の感性には合っていないのですが、皆さんが山本山に抱いているイメージとマッチしていたようです。

ーー新しい店舗以外の部分でも、山本さんは社長として若い社員の方々を積極的に登用されているというお話をうかがいました。

山本:弊社のアメリカ現地法人であるヤマモトヤマUSAは娘に経営を任せています。若い人たちは発想が柔軟ですよね。私は若い人たちに頑張ってもらいたいと思っていますし、私自身も若い人たちから刺激やエネルギーを吸収したいと思っています。

ーーどうして、そう思われるのですか?

山本:年齢を重ねてからも柔軟な発想を忘れない人は、もちろんたくさんいますし、私もそうありたいと願っています。そのためには、若い人たちの意見に耳を傾けて、自分の感性を刺激していく以外に方法がないように思っています。なかでも、私がもっとも強く刺激を受けているのが、自分の子供です。言い換えれば、「どこまで子供の意見を聞けるか」が、私たちが営むファミリービジネスの強さに結びつくと考えているのです。

ーーつまり、お子さんを始めとする次世代の方々の意見を採り入れることで、世代を越えた発想を経営に生かそうとされているわけですね。

山本:そうですね。そしてそこにファミリー・ビジネスの強さがあると信じているのですが、同じような考え方がAudiの製品にも息づいているような気がしています。

ーー企画の主旨にあった話題の振り方をしていただき、ありがとうございます(笑)。

山本:いえいえ、そういうつもりではありませんが、ファミリー・ビジネスの特徴は、トップの意思や考え方が企業の末端に至るまで浸透しやすい点にあります。これを自動車メーカーに置き換えると、作り手の意思が明確ということ。Audiは、これがとてもうまくできていると思っています。いっぽうで、自動車メーカーのなかには市場の声を拾い上げるのが上手な企業もあります。こうした考え方をどこまで採り入れられるかが、ファミリー・ビジネスにとっての課題といえるかもしれません。

ーーちなみに山本さんは、いまどんなクルマを所有されていますか?

山本:自分でステアリングを握るのはAudi RS4 AvantとAudi RS Q8の2台です。クルマをあまりたくさん所有するのは、自分の主義に反するので……。

ーー2台ともAudiにとっては最新モデルですが、ここにもなにか理由があるのでしょうか?

山本:私がクルマに求める最大のポイントは、新鮮で新しいことなんです。言い換えれば、クルマは私にとって時代の象徴。それに触れることによって、いまがどういう時代かを感じ取れるんです。身の回りにあるもので、いまという時代を理解するうえでもっとも役に立っているのがクルマかもしれません。

ーー2台のAudiに共通する特徴があれば、教えていただけませんでしょうか?

山本:他ブランドのスポーツモデルのなかには、普段遣いで乗るときにもレーシングシューズを履かないといけないような雰囲気のクルマもありますが、AudiのRSモデルはまるで逆。もしもサーキットに行こうとすると「え? 本当にサーキットに行くの?」とクルマが聞き返してきそうな感じがします。そのくらい快適性が高いのに、サーキットに行けば行ったで十分に走りが楽しめそうな性能をRSモデルは備えています。もっとも、私自身はそれほどサーキットで走るタイプではありませんが……。

ーーAudi RS Q8とAudi RS4 Avant、どちらに乗る機会がより多いですか?

山本:Audi RS Q8ですね。RS Q8には4WSが標準装備されていますが、これがとてもよくできているんです。低速域では前輪と逆方向に後輪を操舵して小回り性を改善するのが4WSの特徴ですが、他ブランドの製品のなかには、停車中にステアリングを切っても後輪が反対側に切れてしまうモデルがあります。これだと、発進した瞬間にまるで横に向けて走り始めるような感じがして、正直、恐い。でも、Audiの4WSは、停止した状態でステアリングを切っても後輪は操舵されなくて、走り始めてから操舵されるんです。だから安心だし、安全。こういうところが、いかにもAudiらしいと思います。

ーーそんな山本さんに、電気自動車であるAudi e-tronとAudi RS e-tron GTをご試乗いただきました。

山本:2台ともシャシーがバツグンにいいですね。

ーー一般の方が自動車に試乗して、シャシーという専門的な話題から語り始めるというケースは極めて希です。

山本:いやあ、あの走りは、エンジン車には到底できませんよ。バッテリーを低い位置に積んだ電気自動車ならではの、低重心を生かした走りです。

ーーこれもまた、大変専門的な表現ですね。

山本:クルマの重心が低いと、足回りを柔らかくしてもコーナーでしっかり踏ん張ることができるんです。だから、乗り心地が快適なのにハンドリングがいい。Audi RS e-tron GTのように、もともと全高が低いボディであれば重心が低いのはある意味で当然ですが、本質的に重心高が高いはずのSUVボディを持つAudi e-tronの走りにはとにかく驚きました。

ーー走行中にCO2を排出しないことから環境に優しいとされる電気自動車ですが、走りのよさや快適性の面でも優れたポテンシャルを備えているというご指摘ですね。

山本:ハンドリングは、私が所有しているAudi RS Q8よりもいいですし、快適性だって、かつて私が所有していた他ブランドの大型サルーンよりもずっといい。自動車メーカーは100年以上の歳月を費やしてエンジン車を開発してきたわけですが、その水準をわずか数年で乗り越えてしまったのですから、驚かないわけにはいきません。Audi e-tronに乗ったあとでエンジン車に乗ると、まるで昔のクルマに逆戻りしたような錯覚を覚えます。

ーー反対に、不都合やご不便を感じたことはありませんか?

山本:やはり充電環境でしょうか。自宅にはまだ充電施設がないので、会社で充電しているんですが、普通充電だと20時間以上かかってしまいます。こうなると、会社にAudi e-tronを置いてきて、別のクルマで自宅に戻ってこなければなりません。つまり、2台持ちが必須になってしまうわけです。

ーーその辺はご自宅に充電施設を設置することで解消されそうですね。また、公共の急速充電施設などを利用するという方法もあります。

山本:いまはまだ電気自動車がそれほど多くないから、充電施設が混んでいるということもあまりありませんし、充電しようとする電気自動車を温かく見守ってくれるような雰囲気が感じられます。心配なのは、需要と供給が逆転する将来のことですね。

ーーご指摘のとおり、電気自動車の普及にあわせてインフラも充実させていく必要がありそうですね。今日はお忙しいなか、本当にありがとうございました。

山本:こちらこそありがとうございました。

老舗ブランド山本山の経営者としてのスタンス、理念から始まり、ご自身が愛してやまない車への想い、そしてAudiへの情熱をたっぷりと語っていただいた今回のインタビュー。 常に新しい風を取り入れ続け今もたくさんの刺激を受ける山本氏の姿勢はAudiが掲げる革新性の根幹に通じるものを感じさせる特別な時間となりました。