2025年7月掲載

My Style with Audi
継承と革新の交差点。
能楽師・宝生朝哉がAudi SQ8に見る、揺るぎない美学。

能の「ワキ方」は、「シテ(主役)」を引き立てながら舞台全体にリアリティと空間の広がりをもたせる土台です。
決して目立たず、その存在感こそが観客を引き込む力。非日常の物語へ、案内人としての役割を担います。
そしてAudi SQ8が持つ大地を掴むような安定感や静寂に包まれた室内空間は、逞しさと美しさを際立たせた技術者たちの想いの結晶――。
伝統を受け継ぎ、繋いでいく者の重なり合う精神性を、紐解きます。

使用モデル

Audi SQ8

Sの名にふさわしい一台をどこまでも追求し、姿から走りまで大胆に磨き上げることで生まれた卓越のデザイン、SUV の機能性、Sモデルのパフォーマンス。Audi SQ8は、それらすべてを妥協なく高次元でバランスさせた、SUVクーペの新たな幕開けを告げる一台です。

V型8気筒4.0ℓ TFSIエンジンは最高出力373kW(507PS)を発生。8速ティプトロニックトランスミッション、4WDシステムquattro®の組み合わせが生み出す卓越したトラクションと優れた推進力で、スポーティな姿からの期待感をさらに超えて、驚くほど力強く俊敏に躍動する走りを愉しめます。

伝統芸能の家に生まれた葛藤と、今「次代を担う」想い

能楽師の家に生まれた朝哉さん。誰もが当然、“継ぐ”ものだ――と思っていた。しかし自我が芽生えるにつれ、「代々」という圧は重くのしかかり、朝哉さんの胸中は複雑だった。

「小さい頃から、周囲には『長男だから頑張ってね』と言われ続け、自分で自分の道を選ぶ余地が与えられない。なぜ長男だから頑張らなきゃいけないのかという思いは、ずっとありました」

幼少期から始まる能の稽古は過酷だ。台詞や謡(うたい)を覚えるのはもとより、舞台では2時間座りっぱなしのこともある。容赦ないダメ出しと怒号も日常茶飯事だ。「人前に出るのも好きじゃないし、こんなの一生できないと思っていた」と今、朝哉さんは笑う。

転機は高校卒業前の「進路相談」だった。教室の隅で同級生たちは真剣に悩み、情報交換をする。夢を語る。朝哉さんは「お前はいいよな、行く先決まってて」と言われるのがお決まりで、それに抗いたかった。自分にだって、やってみたい仕事はある。そう考えた時、真っ先に思い浮かんだのが航空自衛隊だったという。脳裏にあったのは、東日本大震災発生後の自衛隊の姿だ。

「歌手の長渕剛さんが、震災が起こって1か月という2011年4月、航空自衛隊松島基地(宮城県)を慰問して感謝と激励を述べた映像がSNSでも大きな話題になりました。未曾有の災害において、本当に自衛隊はヒーローだった。一方で、自衛隊隊員の疲労は大きかったはずですが、彼らはそんなことは絶対に表に出さない。慰問ライブでは隊員たちが肩を組んで合唱する一幕があって、それを見て、『俺もこの輪に入りたい!』と強烈に心が掴まれたことを思い出したんです」

仲間とともに国の安全や人命を守る姿に痺れた。幼少期から車や飛行機が好きだった朝哉さんにとって、自衛隊は天職に思えた。航空自衛隊には7年間在籍した。一度は飛び出した能の世界に、戻ってきたのはなぜか。

「自衛隊での仕事にも慣れてきた頃、“守る”べき国の財産について改めて考えてみたことがありました。安全、平和、人命は自衛隊が守る。そうした時、自分は元々日本の文化を守る場にいたんだと気づいて、しかも今、その保護が危機的状況にある。だったら、俺は元に戻るべきなんじゃないのかと」

祖父、そして父から受け継いだものを次の時代へと繋いでいく。それは朝哉さんにしか成し得ない使命であることは確かだった。

凛とした「佇まい」と「引き算の美学」

ワキ方は、説明役として演目の全体像をつかみ、観客を物語へといざなう役回りを担う。幼少期から大人たちの「本気」に揉まれて生きてきた朝哉さんは、極限まで磨かれた動きと謡で紡がれる世界観に没頭せざるを得ない環境下、審美眼が否応なく鍛えられた。

「能って、すべての無駄を削ぎ落としているんですよね。余計な背景も何もなく、佇まいだけで匂い立たせるものがある。僕はまだまだ修行中なのですが」

朝哉さんがAudi SQ8を前にした時、目を奪われたのはエッジを効かせたキャラクターラインだという。優れた板金技術でしか叶えられないラインは、Audi SQ8においてシャープな洗練さに加え、流れるようなダイナミックさを思わせる。

「前から見た時に一直線のラインがいいですよね。能のあり方に感じる引き算の美学にも通じ、力強い軸、芯の強さがある。あと、“顔”(S専用シングルフレームグリル)が青海波に似ていて、なんだか縁起の良さも感じます」

精神を研ぎ澄ます「静」の空間

地方公演などで車移動も多い朝哉さん。車の中は、人一倍特別な空間だという。

「師匠である父とは家の中よりも車の中で一緒にいる時間の方が長いし、車の中でこそ、大事な話をする。面と向かわず、どちらも前を見ているほうが話をしやすいことってあるじゃないですか。舞台の帰りに、車の中でその日の指導をもらう場でもある。外界とある種遮断された車の中は、オンからオフへ、オフからオンへと繋ぐ空間です」

「Audiは、車内の静粛性が優れていますよね。心が整うためには、余計な音がない環境も大切です。緊張をリセットするためにも、自己と向き合い次の一歩に踏み出すためにも、ノイズの無さは車内で過ごす時間を濃密にしてくれそうです」

その濃密で特別な時間をさらに格別なものにするのが、ファーストクラスを彷彿とさせる後部座席の圧倒的な居住性だ。静寂に包まれた広々とした空間で、ゆったりとシートに身を委ねるひとときは、張り詰めた心身を優しく解きほぐしてくれる。実際に後部座席の心地よさを体感した朝哉さんも、「これだけ開放感があってくつろげる空間なら、長距離の移動や舞台の前後でも、最高の状態で過ごせそうですね」と、その高い快適性を絶賛する。

一方で、これほど優雅な室内空間を確保しながらも、実用性を一切妥協していないのがAudi SQ8の魅力でもある。後部荷室は605ℓという十分な広さを備えており、朝哉さんも「装束など荷物がとにかく多いのですが、これなら必要なものが全部入る!ギュウギュウにせずゆったりと積めるのはいいですね」と、荷物の多い能楽師としての視点からも、その頼もしさに興味津々の様子だった。

ブレない「走りの所作」

能における“引き算”で大事なのは何か――「基本を削らない」ことだと、朝哉さんは言う。

「土台となる基礎がしっかりしていないと、小手先で何をしようがダメ。能楽師なら謡の一言一句を大事にするとか、座っている時に動かないとか。間の取り方、足の運びの一つひとつに基本が宿ります。車でいえば走る・止まる・曲がるといったことですよね」

舞台の上で朝哉さんは腰を入れて踵からゆっくり足を押し、少しずつ重心を前に移動させ、滑るように進む。止まる時はピタッと止まる。その動きは限りなくシンプルで、美しい。

「芯となる基本がないと、勢いのある曲になった時に“ごまかし”が生じます。つまり、バタバタしてしまう。基本がブレなければ、曲が早くなろうが遅くなろうが関係ありません。特にワキ方は、物語のノイズになってはいけない。お客さんを引き込み、シテが気持ちよく舞える土台をつくることが仕事です。夢が覚める場面でスッと消えるように、なんでもないような顔をして振る舞うことが求められます」

Audi SQ8のV型8気筒4.0ℓ TFSIエンジンは、最高出力373kW(507PS)。8速ティプトロニックトランスミッション、4WDシステムquattro®の組み合わせは0~100km/hをわずか4.1秒で加速し、最高速度は250km/hと電子的に制限される。研ぎ澄まされた技術が基盤となり、どこまでもなめらかな「動」と「静」の切り替えを実現する。

「タイヤが路面に吸いつくような走りは、能での動きを思い出させますね。下半身をブレさせず、頭が上下しないようにという動きの型を、体に馴染むまでやる。その重心と軸がありつつ、ドライバーへのサポートが違和感のないレベルにあるのは凄いなと思います。デジタルディスプレイやドライブセレクトモードなど、随所にテクノロジーが搭載されていながら物理的なボタンもあり、運転の面白さ、楽しさをちゃんと残してくれていることを感じます」

哲学の共鳴とパートナーシップ

同じ演目でも、能楽師によって生み出される世界はまるで違う。
「自分が信じているもの、信念が滲むものが個性なんだと思うんです。骨組みの上に乗ってくる味というか……余計なものを削いで、磨いて、最後に残るものが本人の個性。それは自分との戦いでもあります」
それは決して華美に主張する個性ではなく、剛健でありながらどこか柔らかさをまとうAudiの理念でもある。

そんな朝哉さんいわく、能の魅力は“非日常”だという。特に情報過多社会でもある現代、「こんなに静かな空間って、他にないでしょう!?」と、朝哉さんはいたずらっぽく笑う。
「人の最高の気分転換は『非日常』で、オンオフを切り替えづらい時代になっているからこそ、よりそれを感じることが大事になっていますよね。能はちょっとしたタイムスリップが味わえますし、いい舞台だと寝れるんですよ(笑)。夢うつつで、きっと最高のデトックスができるんじゃないかな」

好きな言葉は「初心を忘れない」だ。
「時代によって、何が“正しい”かって、変わると思うんです。ただ、最初に何を志したのかは大切で、忘れてはいけない。その思いの強さで、自分が踏ん張れるかどうかが変わってくると思います。僕は高校生の時、なぜ自分が能を頑張っているのかわからなくなって、1回やめたんですよね。でも今は、能という伝統芸能の他にないユニークさがわかる。伝統芸能って、ずっと同じものが続いてきたと思われがちだけど、全然そんなことはない。先人たちがその時代、その時代に適応し続け、紆余曲折を経て、今に残っている。革新がないと、ただ古くなっていくだけです。これからもきっと四苦八苦して道を模索しながら、次代へと伝えていくことになる。伝統と継承は、全能楽師の永遠の課題ですね」


撮影協力:独立行政法人日本芸術文化振興会(国立能楽堂)