2023年9月掲載

Audiが誇る卓越したデザイン
それはどう生み出され、どう進化するのか

ドイツ南部に位置するインゴルシュタットのAudi本社で、エクステリアとインテリアのデザイン部門を率いる2人のリーダーにAudi Japan Salesのマーケティング責任者が特別にインタビューをする機会を得ました。
Audiならではの洗練されたデザインの哲学や思想、そしてデザインの本質について、Audiオーナーの皆様やこれからAudiの購入を検討されている方々へ本社から生の声をお届けします。

Interviewee

Leiter Interieur Design
Ulrich Baierlein
ウルリッヒ・バイアーレイン(インテリアデザインリーダー)

※写真 右

Leiter Exterieur Design
Stephan Fahr-Becker
シュテファン・ファールベッカー(エクステリアデザインリーダー)

※写真 左

お二人がAudiのデザイナーになった経緯をお聞かせください

Ulrich:幼いころ、クリスマスプレゼントにイタリアの小さな会社がハンドメイドでつくっていたクルマのダイキャストモデルをもらいました。そのプロポーションに魅入られ、このおもちゃを手に取るだけで魔法にかけられたようになり、やがて自分の理想のクルマを考えて絵に描くようになりました。後にAudiが初代TTを発売したとき、効率的で直線的で、コンセプトが明確なデザインに大きなインスピレーションを受け、デザインを重視するAudiブランドの一員になることを願いそれが叶いました。

Stephan:子供のころ、ロンドンで様々なクルマを見て育ちました。ドイツ車もすべてのブランドが走っていました。デザイナーとしての第一歩を踏み出したのは2004年ですが、前年にAudiが発表したヌボラーリ・クワトロ(Q8)、パイクスピーク・クワトロ(Q7)、ルマン・クワトロ(R8)の3つのコンセプトカーでAudiに惚れ込みました。ドイツ車メーカー3社からオファーを受けていましたが、つくりたいと思う明確な目標があったためAudiで働くことを選択しました。

Audiらしいデザインはどのようなものとお考えですか?

Stephan:私の考えるAudiらしさは、「デザインと技術の共生」、要するに完全な融合です。「ピュアとリデュース」とも言い換えできますね。つまり過剰なデザインはダメということです。最高のエクステリアデザインとは、その形である理由が見えてくるものだと思うのです。それが私のカーデザインの目標です。

Ulrich:このことは社内で非常に熱心に議論されています。Audiのデザインが特別であるのは、すべてにおいてセンスがあるということ。私たちは見栄えがいいというだけでそのデザインを加えたりはしません。理由があり、機能がある…そのうえで完璧なプロポーション、完璧なディティールを備えた美しさを追求してきましたし、これからもそうしていくでしょう。だから、コンピュータで設計する現代でも、私たちデザイナーはスケッチブックに絵を描いて、ハイテクと自分たちの作業を組み合わせています。これを私たちは「美的知性」と呼んでいます。

Audiをデザインする。そこにはどんな苦労がありますか?

Ulrich:クルマには多くの法律や規制があり、その要件を満たさないといけないことです。このセンサーはこの位置にないとダメだとか、これは歩行者保護のために必要だといった非常に多くの制限をクリアすることが求められていて、私はこれを「デザインのパズル」と呼んでいます。そのうえで、「機能的で美しいクルマ」をつくるのがクールな挑戦なのです。Audiは技術とデザインが見事に融合していますが、私たちデザイナーは、最もクリーンな解決策を導くため、エンジニアリングについても勉強し考えています。

Stephan:シンプルで、かつ期待に沿ったものでないといけません。いくら美しくても、うまく扱えないと思われるようなクルマは根本的にダメなわけです。これはエクステリアも同様で、完璧な骨格で、見栄えするクルマでなければなりません。私はAudiのロゴ「フォーシルバーリングス」がとても好きなのですが、この4つのサークルを、外見・機能・ハイテク・価格と見立てたとき、それぞれが同じ大きさでバランスがとれていなければならないのです。

「Audiは長時間の運転でも身体への疲労度が少ない」とよく耳にします。それはデザインに由来するのでしょうか?

Ulrich:これは本当に素晴らしいチームワークの証だと思います。人間工学のエンジニアは、快適さを追求するには科学的に何が必要かを熟知していて、ドライバーに情報を詰め込みすぎず、また飽きさせない最適なバランスを見つけます。またインテリアのデザイナーは、美的なアプローチよりも道路や交通に集中できることを第一にデザインを考えます。たとえばステアリングホイールやアームレストにしても、デザイナーは多くのモデルをつくって、大きさや形状や手触りを確認し、一番しっくりするものをつくりますが、そこに人間工学の同僚が「あと1cmドライバー寄りに」と言ってくるわけです。こういった積み重ねが、長距離ドライブでのポジティブな経験を裏付けているのです。

Stephan:これこそが、Audiがデザインの会社であるとともに、技術主導の会社であると感じるところですね。エンジニアがお客様にとって完璧なものを示し、デザイナーがお客様にとって可能な限り美しいものに仕上げようとします。非常に美しく、使い勝手もいい…まさに技術とデザインの融合ですね。

様々な技術革新によってデザインへの影響やアプローチは変わっていくのでしょうか?

Stephan:自動運転や電動化など技術は常に新しい進化をもたらしますが、人間の感性において、クルマは自宅の延長のようなもので特にAudi車はとても居心地がいいと感じると思います。一方でワインディングや高速など積極的にドライビングを楽しみたい時などは、技術の進歩によってスポーティな乗り方にもより高度に対応していくはずです。それはつまり技術革新によって「エモーショナル」なクルマをつくる大きなチャンスがあると感じています。将来的には、多くのお客様の声に傾注しながら、Audi車を通じてより「エモーショナル」なデザインを創出するつもりです。

Ulrich:私もエモーショナルな体験を創出する作業が多くなっていくでしょうね。もちろん「自分は運転している」という感覚も欲しいですが、同時に落ち着く空間をつくるのが大事であることです。また、同乗者にもっとフォーカスしたいですね。今はドライバーがメインですが、自動運転が進化して運転する必要がなくなるかも知れないので、来るべき将来に備えて同乗者の快適性にフォーカスしたいです。でもやっぱりエモーショナルなクルマをデザインしたいのが一番大事ですね。

日本のAudiファンに一言ずつお願いします

Stephan:私は日本の国、文化、礼儀正しい人々にとても興味があります。日本を旅し、様々なものに触れてもっと刺激を受け、日本の人々が何を好んで何を好まないのかを知りたいと思っています。私にとって、日本は「ジェスチャー」の点で常にインスピレーションを与えてくれる国であり、謙虚で繊細なところはAudiのクルマづくりとも親和性が高いと思うからです。そして、日本のお客様の期待に応え、お客様を驚かせるような新製品をお届けすることを楽しみにしています。

Ulrich:私から日本のみなさんにお伝えしたいのは、私たちのチームは120%の気持ちで素晴らしいクルマをつくろうと頑張っていることです。いまシュテファンが言ったように、文化や人々を理解して私たちの製品でお客様を幸せにすることができればと思います。私たちデザイナーが、お客様の生活をより豊かにするために創造していることを、Audiから感じ取ってくださればと思います。