Special Interview

日本の冬を知り尽くしたスタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX3」
その安全性能の秘密とは。

冬の日本の道路は、ドライ、ウェット、スノー、アイスと複雑に変化する。
このバラエティに富んだ路面を安全に走るのに必須なのがスタッドレスタイヤだ。
北海道・北東北主要5都市での装着率21年連続でNo.1を誇り、北海道札幌市のタクシーの77.2%が装着するスタッドレスタイヤ「ブリザック」シリーズについて、
ブリヂストンタイヤソリューションジャパンの井上氏に話を伺った。

※掲載内容は2022年10月11日時点のものです。

ブリヂストンタイヤソリューションジャパン株式会社
商品企画本部
消費財商品企画部|井上 雄太 氏

冬のセーフティドライブに対するブリヂストンのこだわり

日本の道路は季節、エリアによってさまざまに変化します。特に冬の路面はドライ、ウェット、スノー、アイスと変化が激しいのが特徴です。
近年では異常気象の影響もあり、雪国ではない東京や大阪などの都市部でも道路に雪が積もることがあり、また場所によっては凍結します。Audiオーナーの皆様も、思わぬ積雪や路面凍結で危ない思いをされたり、クルマが使えず不便に感じたりされた方も多いのではないでしょうか。

ブリヂストンでは、こうした複雑な日本の気象条件に最適なタイヤを求めて、日本中の道路を調査し、要素技術の研究やタイヤの試作を日々行っています。スタッドレスタイヤの場合は、北海道士別市のテストコースや、ときにはスケートリンクも使用して雪上や氷上でのテストを重ね、合格した品質のものだけが「BLIZZAK(ブリザック)」として市場に出ることになります。

ブリザックシリーズは1988年の販売開始以降、時代やお客様のニーズの変化に合わせて進化を続け、長年にわたって雪国を走る多くのドライバーからご支持をいただいてきました。このブリザックの最新モデルが、2021年シーズンに登場した「BLIZZAK VRX3」です。シリーズ史上“断トツ”の氷上性能を持つタイヤで、現在のフラッグシップモデルと位置付けています。今シーズンにはSUV向けにタイヤサイズを拡充し、より多くの車種にお乗りのお客様にご提供できるようになりました。

BLIZZAK VRX3の氷上性能の秘密とは?

BLIZZAK VRX3の最大の特徴は、従来のスタッドレスタイヤと比べて「氷上性能が120%に向上」したこと、つまり凍結した路面でしっかり止まる、そしてしっかり曲がるということです。氷上でタイヤが滑りやすいのは、氷の表面がタイヤとの摩擦や圧力でわずかに溶け、水の膜が発生するからです。たとえばご家庭で冷凍庫から氷を取り出したとき、表面に霜がついた状態の氷を手で触ると指にくっつきますが、表面が溶け始め光沢がある状態ではツルツルと滑るのはご経験があると思います。これと同じことが凍結路面とタイヤとの間で起こっているわけです。

そこでBLIZZAK VRX3では、この滑る原因である水の膜を取り除く為、タイヤの表面にある無数の水路を、従来の半球状から、細く深い楕円状に変更しました。これにより水路の中に取り込める水の量を増やすとともに、毛細管現象によって穴の奥に水が入っていきやすくし、タイヤと路面(氷面)が密着する面積を増やすことで、氷上路面でもしっかり車が止まります。また、タイヤ表面のパターンも改良し、「サイプ」と呼ばれるスタッドレスタイヤ特有の細い溝に水流が入りにくくすることでも接地性を向上させています。このBLIZZAK VRX3は様々な車種、駆動方式に使うことを前提に設計されましたが、quattro®のような4WDシステムですと氷上のグリップ力の高さを最大限に生かせることができると考えます。

発泡形状の進化でグリップ力が向上

横断歩道や直線道路で「この差」を実感

BLIZZAK VRX3は、どのくらいの期間性能を維持できるのか?

BLIZZAK VRX3は、従来のスタッドレスタイヤに比べて「効きが長持ち」し、さらに「摩耗しにくく経済的」になった画期的なタイヤです。
スタッドレスタイヤの性能を引き出すうえで欠かせないのが、タイヤを柔らかく保つということです。そのため一般的にはゴムのなかにオイルを配合しますが、これは経年により徐々に抜けてタイヤが硬くなってしまいます。そこで、BLIZZAK VRX3には新開発の「フレキシブル発砲ゴム」を採用しました。これは、オイルに加えて弊社独自の「ロングステイブルポリマー」を配合したゴムです。このポリマー(高分子化合物)はオイルと同じような特性を持ちつつも分子が大きく、ゴム分子の隙間から抜けにくいため、タイヤが長期間にわたって柔らかく保たれます。

また、先ほど申し上げたサイプの位置や角度を調整することによってタイヤのブロックパターンをなるべく同じ大きさや角度にそろえ、接地面全体に均一に荷重がかかることで、力強いグリップと、偏りのない摩耗を実現します。BLIZZAK VRX3は使用開始時から高い氷上・雪上性能を持っていることに加え、4年使用後も性能が落ちにくく、安心・安全なドライブに寄与します。

使用開始時からの発泡ゴムの氷上性能の推移

摩耗を軽減する均一なトレッド

スタッドレスタイヤ使用の注意点は?

弊社は新品のスタッドレスタイヤ装着時には、慣らし運転を推奨しています。“一皮むく”とも表現しますが、タイヤの性能をフルに発揮できる状態で冬シーズンを迎えるため、目安として200km程度を走っていただければと思います。また、降雪量の多いエリアはもちろん、東京や大阪の都市部などでも突然大雪になることがあり、その際にはタイヤの在庫がなくなったり、交換が間に合わなかったりということもありますので、冬を迎える前に早めのタイミングで交換予約をおすすめします。

 使用時に特に注意することは、空気圧を適正に保つことと、「急」のつく運転操作をしないことでしょうか。とくにタイヤの空気圧は、気温の低下に比例して下がってしまいますので、定期的なチェックと空気の補充が必要です。Audiオーナーの皆様は、車両とあわせてタイヤも点検してもらえるAudi正規ディーラーにお任せいただくのが確実で安心ですね。

 また、よくお問い合わせいただくのが、スタッドレスタイヤの保管についてです。保管の基本は、直射日光や雨風が当たらない涼しいところ、つまり冷暗所がベストです。ホイール付きの場合は空気圧を下げてピンと張ったゴムを休めるようにし、横倒しにして重ねておくと、劣化を最小限に抑えることができます。Audi正規ディーラーですとタイヤ保管サービスもあると聞いていますので、こういったサービスを利用されるのが最も安心と言えるでしょう。

撮影協力:Bridgestone Innovation Gallery

ブリヂストンのこれまでの歩みやDNA、事業活動、さらに未来に向けた活動などを展示中。

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