Audiが誇る電気自動車で本州を往復縦断するロングツーリングイベント

Audi e-tron Cannonball Tour Report

筆者:EVsmart 寄本 好則

静岡県~富山県を高性能EVで駆け抜けて
電気自動車の走りと楽しさを体感

電気自動車(EV)は「航続距離が短い」というのは、すでに時代遅れの思い込みに過ぎません。今回の「Audi e-tron Cannonball Tour」で参加者がドライブしたAudi e-tron Sportbackは423km、Audi RS e-tron GTは534km(ともにWLTCモード)の一充電航続距離性能をもっています。ツアーのルートは往復で約750km。初日が約400km、2日目は約350kmですから、満充電で出発すれば途中での充電はせずともゴールすることは可能です。でも、ただ走るだけではEVの使い勝手などを十分に実感することはできません。
今回のツアーでは、経由地や宿泊施設でAudi e-tronにふさわしい食事や体験が用意されていただけでなく、走行時間や電池残量についてルールを定めた「Cannonball Challenge」をゲーム感覚で楽しむ趣向が凝らされていました。ただ目的地へ向けて走るだけでなく、消費電力を考慮したクルージング速度や戦略的な充電プランを実践するなど、EVならではの感覚を楽しみながら体験できるロングドライブとして工夫されていたのです。

Audi e-tron Cannonball Tour/走行ルート

往路(約400km)Audi RS e-tron GT
日本平ホテル(静岡県)~清里(山梨県)~白馬村(長野県)~リバーリトリート雅樂倶(富山県)

復路(約350km)Audi e-tron Sportback
リバーリトリート雅樂倶~新穂高ロープウェイ(岐阜県)~道の駅 富士川(静岡県)~日本平ホテル

Cannonball Challenge/ルール

往路、復路それぞれ定められた到着制限時間までにゴールすること。
到着時の残充電量基準値を定め、充電量が基準値より多い場合は1%につき5分を減算。少ない場合は1%につき5分を加算する。

<残充電量基準値>
往路/リバーリトリート雅樂倶到着時=35%
復路/日本平ホテル到着時=15%

カーボンニュートラル実現を目指すAudiの取り組み

「Audi e-tron Cannonball Tour」は、11月10日~12日の1stグループと、13日~15日の2ndグループに分けて実施されました。私は電気自動車情報専門のウェブメディアである『EVsmartブログ』でも後日レポート記事を紹介するための取材として、動画担当のスタッフとともに、13日からの2ndグループに参加させていただきました。
初日はディナー(イベントオープニング)の時間までに、翌日のスタート地点となる日本平ホテルにチェックイン。ディナー会場での夕食が始まる前に、イベント主催者のアウディジャパン販売株式会社の営業責任者である遠藤昭久ダイレクターが挨拶。「Audiは2025年に最後のエンジン車を発表し、それ以降はEV専門メーカーとなる」ことや、Audiが「バッテリー材料の採掘から車両アッセンブリーに至るまでの工程を、2050年までに全面的にカーボンニュートラルとすることを目標にしている」など、EVシフトと脱炭素に向けて意欲的なAudiの取り組みが説明されました。

EVの魅力を深く理解しているからこそのイベント内容

続いて、アウディジャパン販売株式会社でマーケティング部門の責任者である海老原育博さんから、走行ルートやルール、電費(エンジン車における燃費)を良くするためのドライビングテクニックについてなどの説明がありました。バッテリーのサーマルコントロール(劣化を防ぐために冷却などを行って温度管理するシステム)についての説明では遠藤さんも一緒に熱く解説してくださるなど、アウディジャパン販売の担当者ご自身がEVについて深く理解されているのが印象的でした。
今回のルートやCannonball Challengeのルールも、海老原さん自身がe-tronで実際に試走して策定したとのこと。細かく説明すると長くなるので割愛しますが、約400kmの往路では35%、約350kmの復路は15%という「残充電量基準値」は、制限速度内で安全に楽しめる競技として絶妙な設定です。

紅葉が彩る八ヶ岳南麓の高原道路をEVで快走

ツアー2日目、ホテルでの朝食を終え、往路のスタートを迎えます。お客様はAudi RS e-tron GTをドライブ。私たち取材チームはAudi e-tron Sportbackで、ゴールのリバーリトリート雅樂倶を目指します。
ツーリング途中に設定されているチェックポイントやランチにも、Audiにふさわしい魅力ある体験が用意されていました。日本平をスタート後は清水ICから高速へ入り、2019年に開通した中部横断自動車道で中央自動車道へ。そして、長坂ICでいったん高速を下り、ランチ会場である清里高原ホテルに立ち寄ります。清里高原ホテルの標高は約1,470m。高原への道を駆け上る途中、八ヶ岳高原大橋では深い渓谷を紅葉が彩る絶景を堪能することもできました。
ランチ休憩が終わると、高原のワインディングロードとして名高い八ヶ岳高原ラインを走って小淵沢ICへ。標高が高いところでは少しピークを過ぎてはいましたが、紅葉のワインディングをAudi e-tronで快走するのは、なんとも至福のひとときでした。

不慣れな急速充電をスタッフがサポート

次のチェックポイントは、長野県白馬村の「スノーピークランドステーション白馬」 です。バッテリー残量にはまだ余裕がありますが、ゴール時の残量を考慮すると高速道路のサービスエリアやパーキングエリア(SAPA)に設置されている40kW以上の出力がある急速充電器で一度充電しておくのが効率的ということで、参加者のみなさんは高速を下りる長野自動車道安曇野ICまでの間にある諏訪湖SA、梓川SAでそれぞれ30分の充電&休憩。EVでのロングドライブは初体験、もちろん急速充電を行うのも初めてという参加者のために、スタッフが伴走してサポートしていました。
日本国内に設置されているEV用の急速充電器の最大出力は、20kW程度から50kW程度(kWは充電器から得られる瞬間的な電力、kWhはバッテリーに蓄える電力量の単位)のものが多いのが現状です。単純計算すると、出力20kWの急速充電器で30分充電しても、最大で約10kWh(実際にはロスなどもあって10%程度は少なくなります)しか充電することができません。今回のように大容量バッテリーを搭載した高性能EVの場合、これでは残量表示が10%ほど回復するだけなので、力不足と感じます。今回のツアーでは、ルート上にある40kW以上の急速充電スポットを案内するマップ(ルール説明や見どころ案内を兼ねたパンフレット)を事前に配布。参加者がそれぞれCannonball Challengeの残充電量基準値以上の電力を残してゴールするための戦略を練る趣向になっていました。道の駅や高速道路SAPAには各地それぞれの特産グルメやお土産を楽しめるところも多いので、休憩やショッピングと充電&休憩をうまく組み合わせた計画にすることが、Cannonball Challengeで好成績を挙げるためのポイントになるのです。

先を急ぐか、充電するか……

ツアーのルートは、安曇野ICを下りてから一般道で白馬村を経て、新潟県糸魚川市へ。糸魚川ICから北陸自動車道に入り、富山ICを目指します。 チェックポイントの「スノーピークランドステーション白馬」 は国内最大規模となるスノーピークの直営店。スノーピークのショップのほか、スターバックスや白馬村の観光案内所もあるスポットです。天気がいい日は、芝生のガーデンや森の向こうに雄大な白馬三山の景観を望むことができるのですが……。私たちが訪れた日は残念ながら雲の中、でした。1stグループが訪れた時は好天&絶景だったようなので、写真はご紹介しておきますね。
往路のゴール、リバーリトリート雅樂倶への到着制限時間は18時30分でした。我々EVsmartチームは、残充電量基準値を下回ることなくゴールできるよう有磯海SAで45%まで(15分ほどでした)充電。18時26分に、バッテリー残量35%ぴったりでゴールすることができました。参加者のなかには途中での充電は1回だけにして1時間ほど前にゴールした組もあったようです。
エンジン車ならスタンドに立ち寄って数分で満タンにすることができます。でも、EVの場合は宿泊先に出力3kWの普通充電器があって、滞在中の12時間充電しても最大で36kWhです。今回のツアーで乗るAudi RS e-tron GTのバッテリー容量は93.4kWh、Audi e-tron Sportbackは95kWhなので、一晩の普通充電で充電できるのは40%弱ということになります。従って「ご当地グルメを楽しみながら、ついでに充電もしておこう」というノウハウが、快適なEV活用のポイントといえます。
「いつでも満タン」は必要ない。「経路上の充電スポットを上手に活用する」といったノウハウは、エンジン車とEVの大きな違いでもあります。Cannonball ChallengeはEV活用のコツや醍醐味を体感できるゲームになっていたのです。

「Premium Charging Alliance」でEVの利便性を向上

Audiではポルシェとともに(2022年11月22日からフォルクスワーゲンも加盟)、最大出力150kW級(現在は最大90kWで運用中)の超急速充電器ネットワークを相互利用できる「Premium Charging Alliance(PCA)」を展開しています。各ブランドのディーラーや都市部などの主要スポットに超高出力の充電器を設置して、各ブランドEVのオーナーだけが利用できる充電サービスによって、高性能EVの利便性をさらに向上させる取り組みです。
また、今回のツアーでも利用した「e-tron Charging Service」の充電カード(オーナーのみ登録可能)に登録すれば、日本全国で約2万基以上の充電ステーションをカバーするe-Mobility Powerの公共充電ネットワークを利用可能。e-tronのオーナーであれば、充電カードの初回登録から1年間、基本料金(月額5500円)および充電都度料金が無料となるサービスを提供しています。
高性能EVとともにパワフルな急速充電サービスを展開してくれるのは、オーナーとしての満足度を高めるファクターになることでしょう。

新穂高ロープウェイの絶景と飛騨牛しゃぶしゃぶ!

復路のルートは、リバーリトリート雅樂倶を出発して奥飛騨温泉郷の新穂高ロープウェイで北アルプスを間近に望む絶景を満喫。ランチには飛騨牛のしゃぶしゃぶをいただいて、松本ICから長野道~中央道へ。さらに中部横断道の途中でいったん高速を下り、チェックポイントである道の駅 富士川に立ち寄ります。
新穂高ロープウェイでは、日本初の2階建てロープウェイで標高2,156mの山頂展望台へ。私たちが訪れた際はここも残念ながら雲の中。でも、1stグループ来訪時は素晴らしい眺望を満喫できたそうです。山頂の雲は残念でしたが、ランチに天気は関係ありません。ロープウェイの後は、新平湯温泉の奥飛騨ガーデンホテル焼岳で飛騨牛しゃぶしゃぶのランチが用意されていました。
ちなみに、この新平湯温泉をはじめとする奥飛騨温泉郷では、小水力発電や地熱バイナリー発電、木質バイオマス発電など再生可能エネルギー活用が意欲的に進められているエリアでもあります。Audi e-tronで訪れるのにふさわしい場所といえるでしょう。

充電にも慣れて参加者のみなさんも余裕のゴール

復路のチェックポイントに指定されていた道の駅 富士川は、山梨県の南巨摩郡富士川町にある施設です。出力50kWの急速充電器が設置されており、増穂ICを下りてすぐなので、中部横断道を移動する際の充電スポットとしても利用しやすい立地です。2022年4月にはバウムクーヘン専門店「BAUM ARURA」(バウムアルラ)がオープン。参加者のみなさんへ、このバウムクーヘンがアウディジャパン販売からのお土産としてプレゼントされました。
私たちはこの道の駅で1回充電。最後に清水市内で時間ギリギリまで充電して無事にゴールとなりました。2日目になると、参加者のみなさんも急速充電や充電計画にも慣れて、とてもスムーズに走破されていました。

Audiブランドにふさわしいユニークで上質なステイ先

今回のツアー、Audiブランドにふさわしいユニークで上質なステイ先が選ばれていたことも印象的でした。初日の日本平ホテルは世界文化遺産の富士山と三保の松原、清水港や駿河湾を望む絶景の地に1964年に開業、2012年に環境にも配慮した現在の施設にリニューアルされたホテルです。2日目のリバーリトリート雅樂倶は神通峡のほとりに佇むスモールラグジュアリーホテル。「リバーリトリート」は「川辺の隠れ家」といった意味でしょう。館内には随所に現代アート作品が配された上質な空間で、料理や露天風呂も最高でした。
また、どちらのホテルにもEV用の充電設備がありました。今後、日本国内の宿泊施設でもEV用の充電設備は「標準装備」されていくようになってくるはず。EV普及の観点からも先進的な、Audiブランドにふさわしい上質なホテルが選ばれていたということです。今回のツアーは、EVへの理解が深いアウディジャパン販売のスタッフが、Audi e-tronの魅力と醍醐味を満喫できるよう、ふさわしいスポットを厳選して組み立ててくれたことを感じます。

今後もチャレンジングで楽しいツアーを!

アウディジャパン販売では、電気自動車(Audi e-tron)の導入に伴い、幅広いオーナーや購入検討をしている方々にEVの醍醐味を知っていただくために、趣向を凝らしたツーリングイベントを開催しています。今回のAudi e-tron Cannonball Tourは、Audi e-tronを体感できるツーリングイベントとしては5回目にして、最長の距離を駆け抜けるラグジュアリーなツアーとなりました。
イベントへの参加者募集は大好評で、リピーターも多いとのこと。応募者が多い場合は抽選になりますが、Audiが好きで、EVに興味があるなら参加する価値があるイベントであることを実感できました。EVに乗ったことがなくて「いろいろ不安」という方もいるでしょうが、乗ってみて使ってみれば、エンジン車とは違う魅力があることに気付けるはず。これからも、趣向を凝らした楽しいツアーが企画されるのが楽しみです。

PROFILE

EVsmartブログ編集長
寄本 好則

兵庫県出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年は電気自動車を中心とした取材と情報発信を展開している。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。2018年から電気自動車専門メディア『EVsmartブログ』編集長として活動中。

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