自然豊かな山道でAudiの最新電気自動車を体感
Audi e-tron Nature Touring Report
レポート: モータージャーナリスト 大谷達也
静粛性と走破性を、初夏のドライブで体感
Audi e-tron Nature Touring 開催
自然豊かな山道をAudiの最新EV“Audi e-tron 55 Sportback”で駆け抜けるイベント、その名もAudi e-tron Nature Touringが先ごろ開催されました。
このイベントは、都会から遠く離れた大自然を背景に、Audi e-tron 55 Sportbackでショートトリップを楽しんでいくなかで、その静粛性や走破性をお客様に堪能していただこうというもの。開催地は2ヵ所で、6月11日と12日の首都圏版が山中湖周辺で、6月18日と19日の関西圏版は信貴生駒スカイラインをメインステージで実施されました。
このうち、私は6月11日に開催された首都圏版のセッション1に参加しましたので、その様子をリポートしましょう。
EV専門メーカーに向けたAudiの取り組み
イベント当日は朝9時に富士マリオット山中湖に集合。早朝だったにもかかわらず、お子様を含む4組7名様に予定どおりご参集いただきました。
コースは富士マリオット山中湖を起点とし、ワインディングロードを33km走って「道の駅つる」で小休止。そこから一般道で都留インターチェンジを目指して中央自動車道に流入し、山中湖インターチェンジで降りてゴール地点の富士マリオット山中湖を目指すというもの。総走行距離はおよそ63kmで、ワインディングロード、市街地、高速道路をバランスよく含んだ興味深いルートが設定されていました。
イベントはアウディジャパン販売株式会社で営業責任者を務める遠藤昭久ダイレクターの挨拶で幕開け。ここで遠藤氏は、冒頭で「Audiは2026年に最後のエンジン車を発表し、それ以降はEV専門メーカーとなります」と言明。続けて「走行時にCO2を排出しないとされるEVですが、Audiはバッテリー材料の採掘から車両アッセンブリーに至るまでの工程を、2050年までに全面的にカーボンオフセットとすることを目標にしています」とAudiの取り組みを紹介しました。
EV専門メーカーに向けたAudiの取り組み
主催者のご挨拶に続いてルート概要の説明が行なわれ、「いよいよ出発か?」という段になって、アウディジャパン販売株式会社でマーケティング部門の責任者である海老原育博氏より「電費走行のポイント」に関する説明がありました。
“電費”とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、一般的なエンジン車の燃費に相当するもので、通常“km/kWh”という単位で表現されます。エンジン車の燃費が“km/ℓ”という単位で表現されるのと、よく似ていますね。ちなみにkWhは電気のエネルギー量を示す単位で、Audi e-tron 55 Sportbackの場合、その電費はおよそ4.2km/kWhとされています(WLTCの場合。カタログには236Wh/kmと表記されていますが、これを換算すると約4.2km/kWhとなります)。
今回のイベントでは、走行後にメーターパネル上に表示された電費をチェックさせていただき、トップの方には記念品を差し上げるというお楽しみが用意されていたのです。これに際し、「電費をよくするには、どうしたらいいのか?」というレクチャーがあったのですが、その第1章が「正しいドライビングポジション」だったというのは、アウディジャパン販売のマーケティング部に走り好きのメンバーが揃っていることの証明かもしれません(笑)。続いて、「急がつく操作をしない」「ドライブセレクトはEfficiencyを選択」といったコツが紹介されましたが、電費改善にもっとも影響が大きいとされるエアコンは今回オンのまま走行するとのルールも案内されました。
もちろん、こうしたレクチャーに従って電費走行に徹するのもよし、また電費を気にせずにAudi e-tron 55 Sportbackの走りを満喫するというのもひとつの楽しみ方でしょう。この辺は、参加された方々の判断に委ねられることとなりました。
ワインディングロードで活きる、EVならではの軽快な走り
さて、いよいよスタートです。4台のAudi e-tron 55 Sportbackは午前10時ごろに次々と出発。休憩地点の「道の駅つる」を目指します。私も皆さんの後を追うようにしてAudi e-tron 55 Sportbackを走らせることにしました。
ホテルを右に出て、国道413号線、いわゆる「道志みち」を走ります。この周辺はドライブコースとしても有名で、右へ、左へとコーナーが連続するワインディングはAudi e-tron 55 Sportbackのハンドリングを試すのにぴったりです。電気自動車の多くは、重いバッテリーを車体のフロアに敷き詰めるようにしてレイアウトしているため、エンジン車よりも重心が低く、これが俊敏なハンドリングの実現に役立っています。この長所を生かしたAudi e-tron 55 Sportbackは、道志みちのワインディングロードでも軽快な走りを披露してくれましたが、いっぽうで電費にも注意をしなければいけません。私はコーナーの手前では早めにシフトパドルを使って減速。走行中の運動エネルギーを電気エネルギーに変えて電費を改善する回生ブレーキを多用し、“好電費”に挑戦しました。
道志みちを約12km走ったところで左折し、県道24号に入ります。ここからはコーナーがぐっときつくなるうえに、上り、下りの勾配が急になります。ここでもAudi e-tron 55 Sportbackは軽快なハンドリングを示してくれたほか、車両の前後に搭載した計2基のモーターが生み出すパワーのおかげで力強い走りが楽しめました。もっとも、電費を考えれば急のつく操作は禁物。私は周囲の安全を確認しながら、慎重にAudi e-tron 55 Sportbackを走らせました。
富士湧水の城下町と名高い道の駅での歓談
県道24号などをおよそ20km走ったところで「道の駅つる」に到着。小休止されている参加者の方々に、ここまでの印象を聞いてみることにしました。
まず、おひとりでご参加の吉田さんは、笑顔でこんな風にお話しくださいました。「車重が2.6トンもあることが信じられないほど、軽快な走りを楽しめました。本当は子供と一緒に参加するはずだったのですが、申し込み後に授業参観が行なわれることが決まり、私ひとりの参加となりました。ウチで待つ家族のためにも、なにかもらって帰りたいと思います(笑)」 ちなみに、ここまでの区間は下り勾配が多かったため、吉田さんの記録も11.3km/kWhと上々でした。
同じ「道の駅つる」で、ご友人とおふたりで参加の井上さんにも感想をうかがいました。「Audiは電気自動車の開発に熱心ですね。とても静かで走りもいいと思いました。ただし、僕たちは今回、Audi e-tron 55 Sportbackの走りを徹底的に楽しむつもりで、電費は一切気にしていません(笑)」 その言葉どおり、この時点での電費は8.1km/kWh。上位入賞は難しいかもしれませんが、Audi e-tron 55 Sportbackの走りをご堪能いただければ何よりです。
「道の駅つる」を出発した後は都留インターチェンジから中央自動車道の富士吉田線、河口湖線を通過して山中湖インターチェンジで一般道に下り、そこから山中湖湖畔を走って富士マリオット山中湖を目指します。この区間の走行距離は、およそ35km。皆さん、昼過ぎには無事にゴールされ、ここでホテルが用意したスペシャルランチコースに舌鼓を打ちました。その内容は、6種の前菜に始まって、スープと続き、メインディッシュは「USアンガスハンギングのグリル」と「鮮魚のポワレ」のコンボ。そしてデザート、食後の飲み物で締め括るという充実した内容です。私も同じメニューをいただきましたが、おいしいうえにボリューム満点で大満足でした。
そして、電費効率の良かった参加者の表彰へ
ランチのあとは待望の表彰式です。皆さん、電費はなかなか優秀で、「走りを楽しんだ」井上さんチームでさえカタログ値と並ぶ4.2km/kWhをマーク。3位は金子さんの4.3 kn/kWhでした。そしてトップは、先ほど紹介した吉田さん、それにご夫婦で参加された西川さんチームが4.9km/kWhで並びましたが、あらかじめアナウンスした「記録が同じ場合は、走行距離が長かったチームの優勝とする」とのルールにより、わずか100mの差で西川さんチームの優勝が決まりました。
その西川さんは、次のように優勝の喜びを語ってくださいました。「まさか自分たちが1位になるとは、想像もしていませんでした。途中まではComfortモードで走っていましたが、Efficientモードのことを思い出したので、助手席に腰掛けていた家内に頼んでEfficientモードに切り替えてもらいました。どうやら、これが効を奏したようです。今日はありがとうございました」
また、惜しくも3位となった金子さんは、Audi e-tron 55 Sportbackの印象を次のように語ってくださいました。「静かで、とても乗り心地がいいと思いました。ほぼ全行程Efficientモードで走りましたが、それでもアクセルペダルを踏み込んだときにはちゃんと加速してくれました。ワインディングロードでは、少しブレーキが重いようにも思いましたが、重心が低いおかげでロールはほとんど感じさせませんでした。後半の高速セクションでも快適で、すごくいい走りだと思いました」
今後もAudi車を体験していただけるツーリングイベントにご期待ください
みなさん、それぞれにAudi e-tron 55 Sportbackの魅力を感じ取っていただくとともに、電費を通じて環境問題について考えていただくひとつのきっかけになったように思います。ちなみに、安全に配慮しつつも、あらゆるテクニックを駆使(?)した私は5.2km/kWhを記録しました。つまり、カタログ値を20%以上も上回っていたわけで、この辺からもAudi e-tron 55 Sportbackのポテンシャルが覗えるような気がします。
アウディジャパン販売では、今後もe-tronを中心として様々なイベントを開催する予定なので、ご興味をお持ちの方は是非、ご参加ください。私も皆さんとお目にかかることを楽しみにしています。
PROFILE
モータージャーナリスト/AJAJ会員/
日本モータースポーツ記者会会員
大谷達也
大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に、二玄社に入社し、CAR GRAPHIC編集部に配属。2002年、副編集長に就任。2010年よりフリーランスのライターとして活動を開始。現在は自動車雑誌、ウェブサイト、新聞、一般誌などに記事を寄稿。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。