2019年に世界第1位の売り上げを誇り、Audiの多くの車種にも純正タイヤとして選ばれているMICHELIN。
本格的な冬を前に今注目を集める「オールシーズンタイヤ」をはじめ、純正タイヤならではの魅力について、
日本ミシュランタイヤの黒谷氏に話を伺いました。
※掲載内容は2020年10月30日時点のものです。
日本ミシュランタイヤ株式会社
乗用車・商用車タイヤ事業部マーケティング部
ブランド戦略マネージャー | 黒谷 繁希 氏
日本ミシュランタイヤ株式会社
乗用車・商用車タイヤ事業部マーケティング部
ブランド戦略マネージャー | 黒谷 繁希 氏
MICHELINは欧州で生まれ、欧州車とともに技術を磨いてきたブランドです。欧州車であるAudiとの相性も良く、おかげさまで多くの車種に純正タイヤ、またはオプションタイヤとして採用いただいています。もちろん、日本の自然環境や道路に適応したスペックを備えています。たとえば、これからの季節に活躍するスタッドレスタイヤ。日本の冬の路面は先進国の中でもかなり特殊で、新雪、圧雪、ざらめ、シャーベット、アイスバーンなど、バラエティに富んでいます。弊社の研究部門も冬は北海道にこもって研究やテストを続けており、そのデータは新たなタイヤにフィードバックされています。もちろん、オールシーズンタイヤや、スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤの中間と位置づけられるウィンタータイヤも同様です。
弊社の製品のなかには、自動車メーカーの要求仕様を満たし、そのメーカーの公認を受けたタイヤがあります。Audiの技術承認記号は「AO」で、このタイヤはAudi Japan Salesでも販売しています。そうした認証タイヤの中で、昨年頃から市場が盛り上がりつつあるのが、オールシーズンタイヤMICHELIN「CROSSCLIMATE SERIES」です。オールシーズンタイヤのカテゴリで「AO」を取得しているのは珍しく、現在、「AO」を取得している「CROSSCLIMATE SERIES」は2サイズあります。たとえば、ヨーロッパで販売されているAudi Q5のオプションタイヤとして設定されています。
MICHELIN「CROSSCLIMATE SERIES」のコンセプトは、“雪も走れる夏タイヤ”です。一般的にはオールシーズンタイヤと呼ばれるカテゴリのタイヤですが、これまでのオールシーズンタイヤは、ドライ、ウェット性能は夏タイヤよりも劣り、雪上性能はスタッドレスタイヤよりも劣るというものでした。実際、Audiオーナーの皆様もそのように認識されている方が多いと思います。
しかしCROSSCLIMATE SERIESは、夏タイヤとしての性能はいっさいスポイルすることなく、そこに雪上性能を加えたというもの。弊社のみにラインナップされる画期的なタイヤです。たとえば東京都内でいうと、1年365日のうち雪が積もるのは4、5日程度。冬にスタッドレスタイヤを履いている場合、その大半の日は夏タイヤに劣る性能で走らなければなりません。また、夏タイヤとスタッドレスタイヤを2セット用意するのは不経済ですし、保管場所の確保などにも気を遣います。もちろん、どちらもお買い上げいただくほうが弊社としてはありがたいのですが(笑)
積雪量や、圧雪されているかどうかにもよりますが、弊社での試験の結果、北海道の一般的な圧雪路では全く問題なく走行できます。都内での数センチ程度の積雪でももちろん大丈夫。ただし、凍結しているところは要注意です。全く走行不可能とは申しませんが、正直、スタッドレスタイヤほどの性能はありません。
耐久性については、実は弊社のスタンダードなエコタイヤである「ENERGY SAVER+」よりも優れています。弊社では毎年夏に試乗会を行っていますが、5万km走行したクルマでもあまり摩耗していないことに参加者の皆様も驚かれていました。また、静粛性もENERGY SAVER+と同等レベルを達成しています。これは、タイヤ表面のブロックが接地面に対して平行にあたることを防ぐ「Vシェイプ」と呼ぶ加工技術や、ブロックパターンを大・中・小3つに分けて並べることによって一定の周波数での共振・共鳴を抑えるといった技術を投入しているからです。これはコンフォートタイヤに使われているのと同じ技術。Audiオーナーの皆様でも、高級車に見合った静粛性にご満足いただけると自負しています。
Vシェイプ加工やブロックパターンの大きさを分けて並べることにより、
音の発生、一定の周波数での共振・共鳴を抑える
スポーツタイヤやRV用タイヤ、エコタイヤなどと違い、CROSSCLIMATE SERIESはセダンやミニバン、SUV、EVなどあらゆる車種での様々な使い方を想定しており、弊社のタイヤのなかでは最もサイズ数を豊富にラインアップしています。
さらに、Audiの技術認証を得ており、一部のAudi車にはオプション設定されています。この技術認証とは、Audiが弊社に対して要求する仕様を満たしたという証で、いわばAudiお墨付きのタイヤです。さらにAudiにはquattroという先進の4WDシステムがありますので、このタイヤのポテンシャルを一段階上に引き上げてくれると思います。実は私自身もAudi Q3に乗っていますが、いちオーナーとしてもとても心強く、頼りにしています。
多くの方が、夏タイヤとスタッドレスタイヤを交互に使われていますが、タイヤは履いていない間も劣化が進み、保管状況によってはその進行度が大きく変わります。日光や雨風に当たる屋外でタイヤむき出しで置くのはもちろん、実は1本ずつビニール袋に入れるのも、内部が高温多湿になる可能性があるので、あまり良くありません。日陰で雨が当たらない風通しの良いところに置くとある程度劣化を抑えることができます。
ホイール付きのタイヤであれば、少し空気圧を下げて横倒しにして、タイヤのサイドウォールが当たらずリム同士が当たるようにして重ねておくのが無難です。また、タイヤだけの場合は縦置きのほうがダメージが少なくなります。これらは、コンパウンドを柔らかくしなやかに保つためにタイヤ内部に含まれている油分がなるべく出ないようにする保管方法です。たとえばレースシーンを見ていても、各チームはそのようにタイヤを扱っているのが分かります。艶出し剤にもタイヤ表面の油分を落としてしまう作用がありますので、ほどほどにしておいたほうがいいかもしれませんね。
弊社が工場で生産してからAudi正規ディーラーや整備工場に届くまで、弊社が直接運んだタイヤにのみ、その表面に「MICHELIN正規輸入品証明ラベル」が貼られています。これは運搬中も厳格に品質管理されたタイヤだということの証です。最近はネット通販などで買われるケースも増えてきていますが、こうしたタイヤは、輸送途中にどのような扱われ方をしたのかが分からないというリスクもないとは言い切れません。
タイヤは乗っている方の命に直結する大事な保安部品ですので、少しでも安心を求めるAudiオーナーの皆様には、Audi正規ディーラーでお買い上げになり、正確に取り付けられることをおススメします。
また、タイヤが最大のパフォーマンスを発揮するのは、弊社指定の適正な空気圧に保たれている場合のみです。日常のチェックはなかなかできないのが実際のところだと思いますので、定期的に販売店でチェックを受けていただきたいと思います。